「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」(国土交通省平成23年8月。以下、各問において「原状回復ガイドライン」という。)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。 1 賃貸借契約書に居室のクリーニング費用の負担に関する定めがない場合、借主が通常の清掃を怠ったことにより必要となる居室のクリーニング費用は貸主負担となる。 2 賃貸借契約書に原状回復について経年劣化を考慮する旨の定めがない場合、借主が過失により毀損したクロスの交換費用は経過年数を考慮せず、全額借主負担となる。 3 賃貸借契約書に原状回復費用は全て借主が負担する旨の定めがあれば、当然に、借主は通常損耗に当たる部分についても原状回復費用を負担しなければならない。 4 賃貸借契約書に借主の帰責事由に基づく汚損を修復する費用について借主負担とする旨の定めがない場合であっても、借主がクロスに行った落書きを消すための費用は借主の負担となる。 |
1:×(不適切) 「借主が通常の清掃を怠った」ことにより必要となる居室のクリーニング費用は、「借主」負担となります。 ※ テキスト+問題集P365の表の「クリーニング」の欄を参照。 |
2:×(不適切) 借主が過失により毀損した「クロス」の交換費用は、経過年数を考慮し、6年で残存価値1円となるような直線(または曲線)を想定し、借主の負担を決定します。借主の全額負担となるわけではありません。 ※ テキスト+問題集P364の表「借主の負担単位と経過年数等の考慮」の「壁(クロス)」の欄を参照。 |
3:×(不適切) 建物の賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗及び経年変化についての原状回復義務を負わせるのは、賃借人に予期しない特別の負担を課すことになるから、賃借人に同義務が認められるためには、少なくとも、賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗及び経年変化の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか、仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には、賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、それを合意の内容としたものと認められるなど、その旨の通常損耗補修特約が明確に合意されていることが必要です。 したがって、賃貸借契約書に原状回復費用は全て借主が負担する旨の定めがあったとしても、その定めは通常損耗の範囲が具体的に明記されているとは言えず、当然には、借主は通常損耗部分について原状回復費用の負担を負いません。 ※ テキスト+問題集P357「(3)特約に関する判例等」参照。 |
4:○(適切) 賃貸借契約書に定めがない場合でも、借主がクロスに落書きを行ったときは、貸主の故意・過失によるものであるため、落書きを消すための費用は「借主」の負担となります。 ※ テキスト+問題集P358「(2)原状回復」参照。 |